新书:《中華民国と文物:国家建設に果たした近代文物事業の役割》
中華民国と文物
国家建設に果たした近代文物事業の役割
作者:張 碧惠 著
出版社:早稻田大学出版部
出版日期:2019年10月30日
A5判 330ページ
定価:4,000円+税
ISBN:978-4-657-19803-7
内容简介
歴史と伝統文化が凝縮した文化遺産である「文物」の破壊・海外流出を防ぐため、国家は何ができるのか―。辛亥革命から台湾へ退去する1949年までの間、中華民国各政府が進めた文物事業の「光と影」に本書は迫る。ナショナリズムと知識人の危機感が追い風となり、文物保護の目的には一貫した方向性があった。法制度も整った。中華民国の人々が「清王朝文物」の価値を発見したとき、強力な権限を持つ専門機関が無かったことから、内部抗争が生じ、保護を有効に進めることができなかった。内憂外患の文物事業に対する考察は、グローバル時代に高まるナショナリズムと文化財の評価・保護の関係から、略奪された文物の返還の在り方までを深く問いかける。
作者简介
早稲田大学アジア太平洋研究科・博士(学術)。立教大学観光学部兼任講師。主な業績「中華民国における「故宮文物」の意味形成――北京政府期を中心に」『中国研究月報』(第63巻12号、2009年)、「南京国民政府期における文物保護政策――「北平文物」の南遷を中心に」『次世代アジア論集 』(No.8、2015年)、「「北京政変」前後における「清室宝物」をめぐる議論――『順天時報』の社論・論説分析を中心に」『アジア太平洋討究』(第30号、2018年) 。
目录
序 章 本書の課題と視角
第1節 問題の所在
第2節 先行研究の検証
第3節 本書の構成
第1章 近代文物事業の黎明──清末民初の文物保護事業
第1節 清末の文物流出と文物保護
第2節 北京政府期の文物保護
第3節 北京政府期の文物流出の阻止と近代考古学の発展
小 結
第2章 中央集権的近代文物事業の成立
──南京国民政府期の文物保護事業
第1節 近代文物事業に関する法令と組織
第2節 南京国民政府期の考古事業と国際関係
小 結
第3章 民国政治空間のなかの「清王朝文物」
――「清王朝文物」・故宮博物院をめぐる諸問題
第1節 中国における近代博物館の受容
第2節 「清室優待条件」と古物陳列所
第3節 「内廷文物」に対する政治的意味の付与と故宮博物院の設立
第4節 故宮博物院設立から南京国民政府による接収まで
第5節 南京国民政府による故宮博物院の接収
小 結
第4章 文物南遷──対日抗戦期の文物保護事業
第1節 古物陳列所文物の南京移転問題
第2節 文物南遷をめぐる様々な動き
第3節 西南内陸への疎開およびその後の文物事業
小 結
第5章 可視化された文物──展覧会と近代文物事業
第1節 国内における展覧会の開催とその狙い
第2節 海外での中国芸術展覧会への出展
第3節 戦後の展覧会
小 結
第6章 文物の「戦後処理」──戦後の文物返還・帰還をめぐる近代文物事業
第1節 戦後の文物返還要求について
第2節 日本に対する返還要請について
第3節 国内における文物の回収
小 結
補 論 辛亥革命から北京政変前後における「清室宝物」をめぐる議論
──『順天時報』の社論・論説分析を中心に
第1節 『順天時報』とその沿革
第2節 「清室宝物」に関する社論・論説の分析
第3節 外務省記録関係文書の検証
小 結
終 章 未完のプロジェクトとしての近代文物事業
第1節 近代文物事業とは何だったのか
──序章における五つの問題提起への回答
第2節 文物のもつ移動可能性という特性
──「コレクション」を補助線として
第3節 見果てぬ文物回収への希求
あとがき
英文要旨